今は早や宿立ち出づる時となり
青き流れを三顧四顧しぬ
■帰郷
懐かしい、故郷に帰ってきた。異郷にあっても、私の心には四万十川の清流が絶えることなく流れ続けていたのだが、こうして、夜もすがら奏でる四万十川の瀬音を耳にした時、あらためて生きる勇気が湧いてきた。
久々の酒肴も満喫した。故郷の酒も、肴も、味わうほどに、味わうほどに、手を合わさずにはいられない。
翌朝早く宿を出て、赤鉄橋脇の堤防を百笑の渕まで歩いてみたが、四万十川の青さも、入田のヤナギ林の新緑も目に柔らかく、やさしい。出発の時刻が迫ってきた。もう一度、この清流の青さを心に刻もうと、川瀬を三顧四顧するのである。
【写真】百笑の堤を・・・西内燦夫氏(四万十川新聞社)
[プロフィール]
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酒仙で知られた文人
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文学碑